今年で97回目を迎えるセンバツ高校野球は1月24日(金)、大阪市内で出場校32校を決める選考委員会が開かれました。 このうち、困難な状況を克服し、好成績を残したチームなどが対象となる「21世紀枠」は、候補校9校から2校が選ばれました。
選ばれた高校は、横浜清陵(神奈川)、壱岐(長崎)の2校でした。今回の候補校9校の情報と共に、この「21世紀枠」をいつ誰がきめるのか?を調査してみました。
春の選抜『21世紀枠』誰が決める?
高校野球ファンにとっては毎年恒例の春の選抜大会は、いつも楽しみです。3年生が抜けて1年生と2年生で構成されるチームの活躍、そして夏の甲子園にも繋がる大会です。この春のセンバツ大会の『21世紀枠』は、一体誰が決めているのでしょうか。それは、日本高校野球連盟や主催の毎日新聞社が委託する「選考委員会」の判断によって選出されます。
春の選抜『21世紀枠』選考基準は?
夏の甲子園は各都道府県の予選を勝ち抜いた高校が出場しますが、春の甲子園は前年の地域毎の大会結果やそれまでの戦績によって選ばれます。その中でも『21世紀枠』は戦績以外にも以下のような基準で選ばれます。
1、少数部員だったり、練習の施設面などで困難な状況を克服している高校
2、学業と部活動の両立がされている高校
3、数年間にわたって、強豪校に惜敗するなどして甲子園出場機会に恵まれていない学校
4、他の学校にはない、創意工夫された練習で成果を上げている学校
5、部外を含めた活動が、他の生徒や地域に良い影響を与えている野球部がある高校
客観的には判断されづらい部分もありますが、そこは様々な情報を収集して選考されているようです。
春の選抜21世紀枠いつ決まる?
開催2ヶ月前となる1月の下旬に開かれる、選考委員会で地域毎の戦績で30校が決まりますが、それと同時に『21世紀枠』の2校も候補の中から決定します。いろいろな理由があり、なかなか甲子園に出場する機会が無かった学校に焦点を当てたこの制度は大変素晴らしい制度ではないでしょうか。
2025春のセンバツ『21世紀枠』候補9校のご紹介
2025春のセンバツ『21世紀枠』の最終候補9校を、選ばれた理由と併せてご紹介していきます。
<北海道釧路江南高校>
北海道釧路江南高校は、道東・太平洋側の港町にある釧路市に、1919年に創立された公立の進学校。部活動では野球のほかアイスホッケーやスピードスケートなど、北海道ならではのウィンタースポーツでもトップ選手を輩出しています。
釧路地方は真冬には氷点下10度を下回る日も少なくなく、11月中旬から4月中旬ごろまではグラウンドが凍ったり、雪が積もったりして練習内容がかぎられる厳しい環境です。そういった状況の中でも、地域の人々から協力も得ながら、農業用ハウスの中で風雪をしのいで工夫をしながら練習しています。
他にも、雪の降り積もったグラウンドを“白い土”にすることを目指して独自に編み出した道具とノウハウで整備するなどして練習に励んでいます。夏の甲子園には、これまで4回出場実績がありますが、センバツには出場経験がありません。
2024年秋の北海道大会では、準々決勝で強豪の北海高校に惜しくも0対1で敗れました。
<岩手 久慈高校>
県立久慈高校は岩手県の沿岸北部にあり、1943年に開校し昨年、創立80周年を迎えた歴史のある高校です。卒業生のおよそ半分が国公立大学に進学する程の、県内有数の進学校です。
地元の久慈市は、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」のロケ地としても知られています。2011年の東日本大震災で被害を受けただけでなく、2016年の台風10号や2019年の東日本台風で、市街地を中心に甚大な浸水被害が発生しました。
部員は全員が地元出身で困難を乗り越えて文武両道を実践し、夢と白球を追い続けています。岩手県大会では2024年を含めて4年連続で春と秋のいずれかで3位以内に入りました。また、2024年の秋には東北大会に出場しましたが2回戦で敗れています。
久慈高校は、1979年に夏の全国高校野球に出場していて21世枠で選ばれれば初めてのセンバツ出場となります。
神奈川 横浜清陵高校
県立横浜清陵高校は1974年に創立され、統合などを経て2017年に現在の校名となりました。野球部は部活動を研究している教授を招き、「部活動とは何か」を考える研修を受けるなどしながら時間をかけてでも納得と合意を大切に運営しているそうです。
グラウンドはほかの部と共有で使用時間にも制限がありますが、細かい部分にこだわりを持った練習や取り組みの結果、県内では常に上位進出を狙うチームに成長しました。2024年秋の県大会ではベスト8に進出しましたが、夏の全国高校野球に出場した東海大相模高校に敗れました。
これまで春夏を通じて甲子園に出場したことはなく21枠で選ばれれば初めての甲子園となります。
愛知 名古屋たちばな高校
名古屋たちばな高校は1961年に創立され、野球部は1972年に創部されました。グラウンドは名古屋市内の河川敷にあり、近年、大雨による河川の氾濫で浸水の被害を受けるなか、保護者やOBの協力を受けながら練習環境を維持しています。
練習では上級生が下級生の面倒を見ながら活動をする“親子制度”を設けて、人間的な成長を促しています。また定期的に学校周辺の清掃を続けているほか、企業のカンボジア学校建設プロジェクトにも協力しているということです。
ここ数年は実力をつけていて2023年夏の愛知大会では4回戦に進み、2024は準々決勝に進んだ実力校です。さらに2024年秋の愛知県大会は3位に入り東海大会に出場しました。甲子園出場はなく、選出されれば、春夏通じて初出場となります。
石川 小松工業
県立小松工業は1939年に創立された100年近い歴史のある高校です。ものづくりに力を入れていて、多くの生徒が地元の企業に就職する地域密着型の学校です。野球部は近年、力をつけていてことし秋の北信越地区大会では強豪の敦賀気比高校に敗れたものの粘り強く戦った点が高く評価されました。近年では、豪雨で浸水被害を受けたほか、2024年1月1日には能登半島地震の被害を受けるなど厳しい状況におかれました。野球部では、練習に励みながらも自然災害の復旧ボランティアに継続して参加して地域貢献にも力を入れてきました。
甲子園は夏の大会に2回出場していますが、センバツには出場経験がありません。
京都 山城高校
府立山城高校は1907年に創立された進学校で「質の高い文武両道」を掲げている高校です。学業を重視していることから、7限授業が週に4回あり、平日の練習は2時間程度と限られるほか、環境面ではグラウンドをサッカー部とわけ合って使用し、十分な広さが確保できないという環境中で、徹底的に効率をあげるよう工夫を凝らすことでレベルアップに励んできました。
この秋の京都府大会でベスト4に進出したことや地域の少年野球チームとの交流を通して競技の普及に取り組むなどの地域貢献も評価されました。甲子園には過去に夏の大会に3回、センバツに1回出場しています。
島根 大田高校
県立大田高校は1921年に創立された進学校です。野球部の選手たちは文武両道に励み近年、国公立大学への進学者も増えています。
野球部は選手11人、マネージャー4人の合わせて15人の少ない人数で活動していますが、ことしの秋の県大会では接戦をものにしてベストフォーに進出し、24年ぶりに中国大会に出場しました。その中国大会では38年ぶりに1回戦で勝ち、準々決勝に進みました。
また、地域の子どもたちへ野球の普及活動も行っていて、地域活性化にも貢献しているということです。甲子園には春のセンバツと夏の全国高校野球にいずれも3回ずつ出場していて、21世紀枠で選ばれれば、38年ぶりのセンバツとなります。
香川 高松東高校
県立高松東高校は1908年当時、女学校として創立された県内有数の伝統校です。1969年には、現在の校名となりました。野球部は、平日は他の部と一緒にグラウンドを使い、内野のスペースだけで練習しています。そこで練習時間に制限がある中、効率よく実施できるように選手たちみずから課題を設定して練習をしています。
練習内容を指導者と相談して決めるなど、選手主体でレベルアップを図り、秋の県大会では29年ぶりに準決勝進出しています。地元の子どもたちと野球で交流をしたり、川の清掃ボランティアに参加したりするなど、地域との関わりを大切にしているそうです。春夏通じて甲子園出場はなく、21世紀枠で選ばれれば初めての出場となります。
長崎 壱岐高校
壱岐高校は1909年に創立された県立高校です。野球部は、女子マネージャー4人を含む25人全員が壱岐島出身です。ほかの3つの部とグラウンドを共用し、十分な広さを確保できないことなどから、自主練習を多く取り入れ、生徒主体のチーム作りを実践しています。
島外への遠征はフェリーと車でおよそ5時間から6時間かかり、年間20回ほどの遠征でおよそ600万円以上掛かっているそうです。こうしたなか、秋の県大会では準優勝を果たし九州大会に出場していて、島の人たちからは「100年に1度の奇跡」と言われているということです。
春夏通じて甲子園出場はなく、21世紀枠で選ばれれば、初めての出場となります。
そしてこの9校の中から神奈川県の「県立横浜清陵高校」と長崎県の「県立壱岐高校」の2校が、2025年春の選抜高校野球に『21世紀枠』で出場が決まりました。是非甲子園を沸かす活躍をして欲しいと願っています。
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